2026年6月5日 - 別記事
2026年、補助金を使って賢くリノベーション。
制度から工事を決めない。使う順番と、300万円の交付を受けた性能向上リノベーションの記録。
「補助金って、いくらもらえるんですか。」
最初のご相談で、よくいただく質問です。
ただ、家の状態や工事内容が分からない段階では、まだ金額を出せません。使える制度も補助額も、その家に何が必要なのかで変わるからです。
補助金をうまく使えるかどうかは、制度をどれだけ知っているかより、考える順番で変わります。
どの会社に頼む方にも役立つ形で、その順番をお伝えします。
制度内容は2026年8月29日時点の各公式サイトの公表内容にもとづいています。
制度は毎年入れ替わります。この記事は「制度名を覚える」ためではなく、「どう探し、どう確かめるか」をお伝えするために書いています。
私たちが順番として大切にしているのは、この4つです。
①この家に何が必要かを決める。断熱か、耐震か、給排水か、間取りか。建物の状態を見て優先順位をつけます。
②予算の上限を決める。借入も含めて、いくらまでなら無理がないか。
③その工事に当てられる制度を探す。ここで初めて補助金が出てきます。
④制度の条件に合わせて、仕様と工程を調整する。
多くの方が、③から始めます。
「補助金が出る工事は何ですか」と聞かれれば、私たちは答えられます。でもその答えから家づくりを始めると、必要のない工事が増え、必要な工事が後回しになりやすいのです。
補助金は、目的地を決める道具ではありません。
決めた目的地へ、少しだけ安く行くための道具です。
そしてもうひとつ。住宅の補助金は、毎年おおむね3月から4月にかけて内容が入れ替わります。名前だけ変わって続くもの、条件や金額が見直されるもの、その年で終わるもの。動き方は一つではありません。
ですから、制度名を覚える必要はありません。いま自分が使えるものを確かめられれば十分です。確かめ方は、この記事の後半でお伝えします。
2026年のリフォームで関係しやすいのは、住宅省エネ2026キャンペーンの3つの事業です。
窓の断熱改修 → 先進的窓リノベ2026事業
壁・床・天井などの断熱改修、エコ住宅設備 → みらいエコ住宅2026事業
高効率給湯器の設置 → 給湯省エネ2026事業
工事内容によっては、これらを組み合わせて申請できる場合があります。ただし、同一の工事や同一の製品について国の補助を重複して受けることはできず、それぞれの要件を個別に満たす必要があります。
「どの制度を使うか」ではなく、「家全体で何を直し、その一つひとつにどの制度を当てられるか」。この順番で考えると、無駄がなくなります。
制度ごとの補助額や要件は、別の記事にまとめています。
壁を開ける工事は、断熱材を入れ替える機会でもあります。床をはがす工事は、配管を更新する機会でもあります。
工事内容によっては、小分けにするより一度に行ったほうが、仮設や解体・復旧の重複を減らせる場合があります。
制度の面でも、小さすぎる工事は申請できないことがあります。みらいエコ住宅2026事業と先進的窓リノベ2026事業は、原則として1つの申請あたり補助額の合計が5万円以上必要です。
(※他の事業と組み合わせる場合など、条件によって下限が変わることがあります。詳細は公式サイトでご確認ください)
お金の流れが、多くの方の想像と違います。
住宅省エネ2026キャンペーンでは、交付決定のあと、補助金はまず登録事業者である工事会社に交付されます。そして工事会社から工事発注者へ還元されます。
還元の方法は、公式に2つ定められています。
①工事代金の一部に充当する方法(請求額から差し引く)
②現金で支払う方法(工事会社から施主の口座へ振り込む)
どちらにするかは、申請前に「共同事業実施規約」という書面で、施主と工事会社があらかじめ取り決めます。
「補助金は工事代金から相殺されるもの」と説明されることがありますが、それは2つあるうちの一方です。必ずそうなるとは限りません。
なお、工事会社が補助金の一部を手数料として差し引くことは認められていません。取り決めた方法で、全額が施主に還元されます。
住宅省エネ2026キャンペーンのリフォームでは、交付申請ができるのは工事の完了・引渡し以降です。そこから審査を経て交付決定、さらに工事会社への振込までに1〜2か月かかります。
つまり、工事が終わってから数か月後に、ようやくお金が動きます。この時間差があるため、「最終金からあらかじめ差し引く」方式をとる会社は、その間の資金を立て替えることになります。会社によって扱いが違うのは、このためです。
例:工事費1,000万円/交付が確定した補助金100万円/還元方法は「契約代金への充当」を選択 → 施主の負担は900万円になります。
※交付額が確定する前の段階では、この金額は見込みです。審査の結果や予算の状況によって、減額や不交付になることもあります。
なお、自治体の制度には、申請者ご本人の口座へ直接振り込まれるものもあります。制度によって、お金の流れは変わります。
補助金は、申請すれば必ず交付されるものではありません。予算の上限に達していた、要件を満たしていなかった、書類に不備があった。いずれの場合も交付されないことがあります。
そのため住宅省エネ2026キャンペーンでは、申請前に「共同事業実施規約」で次の3点を取り決めることになっています。
補助金の受取方法(充当か、現金か)
申請ができなかった場合、または交付を受けられなかった場合の負担の範囲と方法
申請手続きにかかる事務手数料の有無
ここを曖昧にしたまま契約すると、「補助金が出る前提で話していたのに」という食い違いが起きます。口頭だけでなく、契約前に書面でも確認してください。
住宅省エネ2026キャンペーンでは、交付申請の予約は工事着手以降、交付申請は工事の完了・引渡し以降です。申請自体は着工後の手続きになります。
ただし、着工前に済ませておかなければならないことがあります。
工事請負契約の締結(契約前に着手した工事は対象外です)
共同事業実施規約の締結
使用する製品が対象製品として登録されているかの確認
工事前写真の撮影
工事前写真は特に重要です。撮り忘れると、原則として補助対象になりません。壁を壊してから「撮っていませんでした」では取り返しがつきません。
一方、自治体の制度や住宅の性能認定を伴う制度は、順番が異なる場合があります。交付決定の通知が届く前に着工すると対象外になるものもあります。制度ごとにルールが違いますので、自己判断で着工せず、施工会社と要件を確認してから工事を始めてください。
住宅省エネ2026キャンペーンには、複数の締切があります。
①交付申請の予約の受付終了:遅くとも2026年11月16日
②交付申請の受付終了:遅くとも2026年12月31日
③予算上限に達した時点での終了:①②の期日を待たずに終了します
工事が数か月にわたる場合、完了を待っている間に予算が埋まる可能性があります。そのために「交付申請の予約」という任意の手続きがあり、工事着手以降であれば申請予定額を確保しておけます。予約の有効期間は、提出から3か月または2026年12月31日のいずれか早い日までです。
各事業の公式サイトでは、予算に対する申請額の割合が随時公表されています。工事の時期が決まったら、そのときの状況を確認してください。
制度名は毎年変わりますが、確かめ方は変わりません。
住宅省エネキャンペーンの公式サイトで、その年度の事業の顔ぶれと要件を確認する
各事業の公式サイトで、予算に対する申請額の割合を確認する
お住まいの自治体の建築住宅課・建築指導課のページで、その年度の受付期間を確認する
年度が変わって制度名が入れ替わっても、この3か所を見る手順は同じです。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
補助の額だけを見て「100万円得した」と考えると、判断を誤ります。補助制度を利用するために、追加で必要になる費用があるからです。
補助金の申請は、書類を1枚出して終わりではありません。対象製品の型番確認、性能を証明する書類の取り寄せ、工事前と工事後の写真の撮影と整理、共同事業実施規約の締結、申請書の作成、予約と本申請の管理。通常の工事には発生しない作業です。
申請代行費の扱いは会社によって異なります。無料の場合もあれば、別途費用が設定されている場合もあります。契約前に確認しておくことをおすすめします。
ティーズでは、この実務に対して申請代行費用を別途いただいています。見積もりの段階で金額を明示し、あとから追加することはありません。
補助金には、性能の条件がついています。先進的窓リノベ2026事業は、事務局に登録された対象製品で、かつ一定の断熱性能を満たす窓でなければ補助を受けられません。給湯省エネ2026事業の性能加算も、指定の要件を満たす型番に限られます。
標準的な製品より一段グレードの高い建材や設備を選ぶことになれば、その差額はかかります。
これが、いちばん見落とされる部分です。
実例でお話しします。耐震補強でケミカルアンカーを使う場合、基礎に穴を開けて薬剤で金物を固定します。その基礎に手を届かせるには、その位置の外壁や内壁を壊して開けなければなりません。
補強が終われば、壊した壁を元に戻します。下地を組み直し、断熱材を入れ直し、仕上げをやり直す。さらに厄介なのが取り合いです。壊した部分だけ新しい仕上げにすると、周囲との継ぎ目が目立つため、補強とは直接関係のない範囲まで仕上げをやり直すことがあります。
補助対象になるのは補強工事の部分だけで、この復旧と取り合いの工事は対象外になることが多いです。
補助対象の工事を行うために、補助対象外の工事まで必要になる。こうした費用が発生する場合があります。見積もりに入っていないと、後から「話が違う」になります。
補助の見込額 − 補助制度を利用するために追加で必要になる費用 = 実質的なメリット
追加で必要になる費用とは、申請代行費、対象仕様へ変更するための差額などです。
この引き算をしないまま「最大100万円」だけを見ると、判断を誤ります。
誤解のないように書き添えますが、仕様を上げること自体が無駄な出費というわけではありません。断熱性能の高い窓や高効率の給湯器は、光熱費の削減につながる可能性があります。
問題なのは、補助金がなければ選ばなかった工事まで足してしまうことです。
ティーズでは、お見積もりの際に「補助金を使う場合」と「使わない場合」の両方をお出しします。差額を見ていただいたうえで、使うかどうかを決めていただきたいからです。
ここからは、ティーズが実際に国の補助事業を使ったときの話です。
2020年。前橋市の築32年の中古住宅を購入されたお客様から、リノベーションのご相談をいただきました。
利用したのは、当時の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」。既存住宅の性能を長期優良住宅の水準まで引き上げる工事に対する制度で、インスペクションの実施と維持保全計画の作成が条件になっていました。
工事は、内外装を解体し、柱や梁などの構造が見える状態まで戻すところから始めました。
屋根の葺き替え
壁・床・天井の断熱改修
耐震補強と基礎の補強
床下の湿気対策と防蟻処理
給排水・電気設備の全面更新
水まわり設備の入れ替え
維持保全計画の作成
耐震・断熱・防蟻・設備更新まで、見えない部分から性能を整える大規模なリノベーションでした。
交付を受けた補助金は、300万円でした。当時の制度区分は「高度省エネ型」(250万円/戸)に加算(50万円/戸)を合わせたものです。
この制度は、書類と記録の負担が非常に重いものでした。
基礎の高さ、アンカーの種類、耐力面材の選定。条件が細かく、施工前・施工中・施工後の写真を、工程ごとに看板を入れて記録し続けなければなりません。撮り漏れがあれば、その工程は認められません。
先ほど書いた「対象外の工事」も、この現場で経験したことです。基礎への金物固定のために壁を開け、戻し、取り合いを合わせる。図面には現れない手間が、いくつも出てきました。
窓口に質問しても、数百ページのマニュアルを読んでくださいと返ってくる。当時、群馬県内でこの制度の認定を受けた住宅は、私たちが把握している限りごくわずかでした。
当時の私たちの体制では、正直、かなり負担の大きい制度でした。
それでも認定まで到達できたのは、お施主様が誰よりも制度を勉強してくださったからです。
建築とは無関係のお仕事をされている方が、書類作成や工程管理まで一緒に動いてくださいました。本来、業者が主導すべき作業です。
この工事のあと、お施主様からこんな言葉をいただきました。
Googleクチコミより(Ren様)
大手ではなかなか受け入れてもらえない、私たちの細かな要望にも柔軟に応えてくれたことに大変感謝しています。
耐震性と断熱性の向上に関する工事も行い、長期優良住宅のリフォーム補助金を利用することができました。
(Googleのクチコミページで全文をご覧いただけます)
この工事で気づいたことがあります。デザインよりも先に、住宅の性能を上げること。それがお客様の毎日の快適さに直結するということです。いまティーズが性能向上リノベーションを軸にしているのは、この経験があるからです。
大事なことなので、はっきり書きます。
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、令和7年度で交付申請の受付を終了し、令和8年度(2026年度)は実施されていません。
ですので、いま同じ300万円は出ません。2026年のリフォーム向け制度で最も大きい「みらいエコ住宅2026事業」でも、上限は住宅の新築時期と工事内容に応じて40万円から100万円です。
ただ、この制度がなくなったからといって、住宅改修への支援そのものがなくなったわけではありません。2026年度にも、省エネ改修などを対象とした国の制度や、自治体独自の制度があります。
補助を受けるためだけに、本来予定していなかった工事まで増やす。補助対象だからという理由だけで設備を選ぶ。
どちらも、私たちはおすすめしません。
先ほどの前橋市の工事も、いま振り返れば反省があります。制度を通すことが目的になり、本来お伝えすべきだった優先順位のご説明が、後回しになった場面がありました。
補助金を追いかけると、判断の軸がぶれます。これは経験として、正直にお伝えしておきます。
ですので、ティーズでは打ち合わせの早い段階で、この2つを分けます。
診断や調査の結果、必要と判断した耐震・防水・配管・断熱などは、補助金の有無だけで外さない。ここを補助金が出るかどうかで決めると、後悔することになります。
一方で、設備のグレードや、いま急がなくてもいい部位の改修。ここは「補助が出るなら今やる、出ないなら次の機会に」と判断していい工事です。
この線引きを、お互いに最初に意思表示しておく。それだけで、資金計画はずいぶん組みやすくなります。
補助金の話は、調べれば調べるほど複雑に見えます。制度名も毎年変わります。
でも本当に必要なのは、制度の暗記ではありません。この家に何が必要かを見極めることと、要件と手続きを正しく説明できる会社に頼むこと。この2つだけです。
「いま、うちで使える制度はありますか」。その一問だけでも構いません。使えない場合は、使えないとお伝えします。
本記事は2026年8月29日時点の制度概要をご説明するものであり、補助金の交付を保証するものではありません。
対象の可否・補助額・申請期限は、住宅の状況、工事内容、使用する製品、予算の執行状況、審査結果等によって異なります。
工事のご契約前、または着工前に、必ず最新の公式情報と施工会社にご確認ください。
株式会社ティーズオールワークス 代表 多胡竜真 | 群馬県高崎市 | 二級建築士・宅地建物取引士
最終確認日:2026年8月29日