2026年6月3日 - 別記事
中古住宅の耐震、どう考えるか。
新築の「等級」と中古の「評点」。購入前に知っておきたいこと。
「この家、地震で大丈夫ですか。」
中古住宅を見に行かれた方から、必ずと言っていいほど出る質問です。
外から見ただけで答えを出すことはできません。そして中古住宅の耐震は、新築の話とは前提が違います。
同じ「耐震」という言葉でも、新築と中古では評価するものさしが違うのです。
何を調べ、どう判断すればいいのか。順に整理します。
制度の内容は2026年8月27日時点の高崎市公式サイトの公表内容にもとづいています。
補助制度は年度ごとに変わり、予算上限に達した時点で受付を終了します。最新の状況は市のページでご確認ください。
新築の広告でよく目にするのが「耐震等級」です。住宅性能表示制度にもとづく等級で、地震力に対する強さを3段階で示します。
| 耐震等級 | 内容 |
|---|---|
| 等級1 | 建築基準法が求める耐震性能と同等の水準 |
| 等級2 | 等級1の1.25倍の地震力に対して倒壊・崩壊等しない |
| 等級3 | 等級1の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊等しない |
ここでひとつ、誤解の多いところを。「1.25倍」「1.5倍」は、地震そのものの大きさ(震度やマグニチュード)の倍率ではありません。住宅性能表示制度で想定する地震力に対する、構造の強さの倍率です。
一方、すでに建っている住宅の耐震性を改めて調べる方法が耐震診断です。ここで使うのが上部構造評点という数値になります。
壁の量、壁の配置、接合部、基礎、劣化の状況などから算出し、次のように判定されます。
| 上部構造評点 | 判定 |
|---|---|
| 1.5以上 | 倒壊しない |
| 1.0以上〜1.5未満 | 一応倒壊しない |
| 0.7以上〜1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
| 0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
高崎市の補強設計補助も、診断結果が1.0未満だった住宅を、改修後に1.0以上とする設計が対象です。そのため、耐震改修を考えるうえで評点1.0がひとつの基準になります。
気をつけたいこと:「評点1.5」と「耐震等級3」は同じ意味ではありません
数字は似ていますが、評価する制度も計算方法も異なります。単純に置き換えることはできません。
なお、中古住宅だから等級が分からない、とは限りません。新築時に住宅性能評価を受けていれば、耐震等級を確認できる住宅もあります。今後はそうした記録の残る中古住宅も増えていきます。
築年数は大切な手がかりです。ただし古い・新しいではなく、どの時期の基準で建てられたかを見ます。
昭和56年(1981年)5月31日以前|いわゆる旧耐震。現在とは求められる壁の量が異なります
昭和56年6月〜平成12年(2000年)5月|新耐震基準の建物ですが、接合部の仕様や耐力壁の配置についての規定は、現在ほど明確ではありませんでした
平成12年6月以降|接合部や耐力壁の配置に関する規定が明確化された、現行の考え方に近い建物です
耐力壁が建物の一方に偏っていると、地震のときに建物がねじれるような力を受けやすくなります。壁の総量が基準を満たしていても、配置が悪ければ弱いところから壊れます。
また、柱と梁、柱と土台をつなぐ接合部が十分に緊結されていないと、壁が受け止めた力を建物全体へ伝えられません。柱が引き抜かれてしまえば、壁は働きません。
1981年以降の住宅でも、2000年より前の木造については、壁の量だけでなく配置と接合部まで確認する意味があります。
2016年の熊本地震では、益城町の中心部で震度7が2回観測されました。国土交通省の調査による木造住宅の倒壊率です。
旧耐震(昭和56年5月以前) 倒壊率 28.2%
新耐震(昭和56年6月〜平成12年5月)倒壊率 8.7%
平成12年6月以降 倒壊率 2.2%
出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告資料
この調査では、建築時期が新しい区分ほど倒壊率は低い結果でした。同時に、2000年以降の建物でも被害がゼロだったわけではありません。
基準を満たしていることだけで安心せず、その建物の状態を個別に確かめる。それが結論です。
この2つは、よく混同されます。目的が違います。
| インスペクション(既存住宅状況調査) | 耐震診断 | |
|---|---|---|
| 目的 | 現在の劣化や不具合を調べる | 地震に対する構造的な強さを評価する |
| 主に見るもの | 基礎・外壁・屋根・床・天井などの劣化、雨漏りの跡 | 耐力壁の量と配置、接合部、基礎、劣化 |
| 分かること | 劣化や不具合の有無 | 上部構造評点 |
費用の目安は、インスペクションが7万〜15万円程度/棟。耐震診断は、一般診断(図面がなく、現地採寸や図面の復元が必要な場合)で15万〜25万円程度/棟、精密診断(改修設計や詳細な計算を含む場合)で25万〜40万円程度/棟です。
家の広さや築年数、床下や小屋裏に入れるかどうか、図面が残っているかなどによっても費用は変わります。依頼先によっても異なりますので、見積もりを取って確認してください。
そして、いちばん大事なことを書きます。
インスペクションで問題がなかった=耐震性も問題がない、ではありません。
劣化がなくても壁の量が足りていない住宅はありますし、評点は足りていても雨漏りが進んでいる住宅もあります。両方を見る必要があります。
よくいただく質問なので、はっきり書いておきます。
売主の承諾を得て建物を調査できれば、購入前に耐震診断を行うことも可能です。そして一般的な耐震診断は、建物をすべて解体して行うものではありません。
図面を確認し、目視できる範囲や、床下・小屋裏に入れる範囲を調べていきます。
ただし、壁や床の内部まですべて確認できるわけではありません。リノベーションで解体してはじめて、筋かいが図面どおりに入っていない、金物がない、土台や柱に腐朽や蟻害がある、といったことが分かる場合があります。
購入前の診断は「見える範囲で現在の耐震性を把握するもの」と考え、解体後に補強内容が変わる可能性も予算に見込んでおくことが大切です。
なお高崎市には、市が診断技術者を派遣する簡易的な診断制度もあります。補助を使った一般診断とは別のもので、派遣診断を受けたあとでも一般診断の補助は受けられます。
高崎市の補助制度では、耐震診断・補強設計・工事監理を行えるのは、市内の建築士事務所または建設会社に勤務する建築士で、木造住宅の耐震診断と補強方法の講習等を受講している者と定められています。
ティーズは工事を担う会社です。耐震診断そのものは行わず、必要な場合は資格を持つ建築士事務所をご紹介します。ご紹介先と直接ご契約いただき、その結果をもとに私たちが工事内容とお見積もりをご提案します。
耐震補強は、ただ強い部材を足せばいいわけではありません。建物の弱いところを見つけ、必要な補強を組み合わせていきます。
劣化を取り除く|腐朽やシロアリの被害がある部分から。土台や柱そのものが傷んでいれば、先に劣化部分への対応が必要です
基礎を確認する|無筋か有筋か、ひび割れの状況。補強の内容と費用を左右します
接合部を直す|柱の頭と脚が抜けないように金物で緊結します。1981年から2000年頃の住宅では、特に確認しておきたい部分です
耐力壁を増やす、配置を整える|量とバランスの両方を見ます
屋根を軽くする|建物の上部を軽くして、地震のときにかかる力そのものを小さくします
どこから手をつけるかは、診断の結果次第です。同じ築年数でも、必要な工事は一棟ごとに違います。
中古住宅の耐震性を考えるうえで、比較的検討しやすい方法のひとつが屋根の軽量化です。
壁を増やして耐えるのではなく、建物の上部を軽くして、そもそもかかる力を小さくする。発想が逆方向です。
室内の壁を壊したり、部屋の配置を変えたりせずに耐震性の改善につなげられる場合があることも、この工事の特徴です。
補助額:屋根改修工事費用の50%、上限100万円
対象となる既存屋根:粘土瓦、セメント瓦など、目安として1平方メートルあたり35kg以上のもの
葺き替える屋根材:カラー鉄板、ガルバリウム鋼板など、1平方メートルあたり25kg以下のもの
既存の瓦に落下防止の措置をするだけの工事は対象外。新しい屋根材へ葺き替えることが前提です
工事業者は、市内に本店・支店・営業所または事業所を有する者であること
受付期間:5月11日から11月30日まで(予算が終了次第、受付終了)
補助の対象になる範囲が意外と広いことも、知っておいて損はありません。仮設足場、既存屋根材の撤去、下地の補修、防水シートの張り替えなども対象に含まれます。一方、雨樋は屋根ではないため対象外です。
対象になる工事の範囲は細かく定められています。詳細は高崎市建築指導課にご確認ください。
ティーズでは、この補助を使った工事を複数件お手伝いしてきました。申請の手続きも含めて対応しています。
【重要】2026年度(令和8年度)の屋根改修工事補助は、予算が終了しています
高崎市の公式ページに「今年度の予算が終了しました」と掲載されています(2026年6月29日時点)。
受付は例年5月中旬に始まり、予算に達し次第終了します。記事公開時点の状況に合わせて、この記述は必ず更新してください。
高崎市では、耐震改修工事と屋根改修工事について、補助対象となる工事が重複しなければ併用できるとされています。
また、先に屋根を軽量化した場合でも、その状態を前提として耐震診断と補強設計を行うことができます。屋根が軽くなった分、必要な補強が減る可能性もあります。
金額を並べておきます。
| 事業 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 耐震診断 | 診断費用の50% | 5万円 |
| 補強設計 | 設計費用の50% | 10万円 |
| 耐震改修工事(工事監理費を含む) | 工事費用の80% | 140万円 |
| 耐震除却工事 | 算定額の23% | 46万円 |
| 屋根改修工事 | 工事費用の50% | 100万円 |
耐震診断・補強設計・耐震改修・耐震除却の補助は、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた木造住宅が対象で、申請できるのは個人に限られます。屋根改修は建築時期の制限がなく、法人でも申請できます。
ただし、併用の可否や申請の順序には条件があります。両方の制度を検討される場合は、工事に着手する前に高崎市建築指導課へ必ずご確認ください。
出典:高崎市建築指導課「高崎市緊急耐震対策事業(耐震補助金)」「屋根改修工事補助」「耐震補助金に関するよくある質問」(2026年8月27日確認)
①交付決定の前に、契約も着工もできません。申請書類を提出し、交付決定通知書が発行されてから、はじめて請負契約と工事の着手ができます。交付決定日より前に着手した場合、契約を結んだだけでも対象外になります。国の省エネ補助金とは順番が逆です。
②受付期間内でも、予算上限に達した時点で終了します。受付は5月11日から11月30日まで、完了報告は2月26日までですが、屋根改修補助が今年度すでに終了しているとおり、期日まで残っている保証はありません。
③補助金は、後から入ってきます。支払いは完了報告のあとになるため、工事代金は一度、申請者がご自身で全額お支払いいただくことになります。140万円の補助が出る工事でも、それが手元に届くのは工事が終わってから。資金計画には、この時間差を見込んでおいてください。
「制震ダンパーを入れれば安心ですか」というご質問をいただくことがあります。
制震装置を否定しているわけではありません。ただ、既存住宅では順番があると考えています。
まず現在の耐震性と劣化の状況を把握する。必要な耐震補強を検討する。そのうえで、繰り返しの揺れへの備えとして制震を追加するかを考える。
制震装置は製品や工法によって考え方も評価方法も異なります。導入を検討される場合は、その製品がどのような条件で評価されているかを確認したうえで判断してください。
耐震補強にいくらかかるかは、診断を行って補強計画をつくらなければ判断できません。数十万円の部分的な補強で済む住宅もあれば、基礎や屋根まで含めて大きな工事になる住宅もあります。
そのとき大切なのは、耐震だけを切り離して考えないことです。
物件価格 + 購入諸費用 + リノベーション費用(耐震・断熱・設備・内装など)
この総額で、新築や建て替えと比較する。
立地に価値があり、建物にも魅力があるなら、補強に費用をかける意味は十分にあります。逆に、総額が新築と変わらないのであれば、無理に中古にこだわらず並べて比較したほうがいい。
耐震は、全体の予算配分の中でどうバランスを取るかという話です。
最後に、いま気になっている物件がある方へ。購入を決める前にできることを3つだけ挙げます。
建築時期を確認する。昭和56年5月31日以前か、平成12年5月以前か、それ以降か。登記や建築確認の日付で分かります
売主に、図面や新築時の書類が残っていないか聞く。図面があるかどうかで、診断でできることが変わります
売主の承諾を得て、耐震診断やインスペクションができないか相談する。買ってからでは選択肢が減ります
この3つは、どの建築会社に相談される場合でも同じです。
耐震の話は、専門用語と数字が並んで難しく感じられると思います。ただ、押さえるところは多くありません。
新築の等級と中古の評点は別のものさしであること。古い家だから危ない、新しい家だから大丈夫、と築年数だけで決める必要はないこと。インスペクションと耐震診断は目的が違うこと。そして、診断は購入前にもできること。
この4つを知っているだけで、物件の見え方は変わります。
ティーズは診断を行う会社ではありませんが、診断結果をどう工事に落とし込むかは私たちの仕事です。屋根の軽量化については、補助の申請手続きも含めてお手伝いしてきました。
「気になっている中古物件があるけれど、耐震が心配」。その段階のご相談で構いません。まだ購入を決めていなくても大丈夫です。
事務所には家具のお店を併設しています。ソファに座って、物件の資料を広げるところから始めていただければと思います。
T’s Garage Furniture に行ってみる(高崎市稲荷台町398)
本記事は中古住宅の耐震について一般的な考え方をご説明するものであり、個別の住宅の耐震性を判断するものではありません。
また、補助金の交付を保証するものではありません。対象の可否・補助額・受付状況は、住宅の状況、工事内容、予算の執行状況等によって異なります。
制度の内容は年度ごとに変わります。ご検討の際は、必ず最新の情報を高崎市建築指導課(027-321-1271)または各自治体の窓口にご確認ください。
株式会社ティーズオールワークス 代表 多胡竜真 | 群馬県高崎市稲荷台町398 | 二級建築士・宅地建物取引士
最終確認日:2026年8月27日