2026年6月6日
先に、壊しました。
雨漏りを直すのに、屋上ではなく天井から手をつけた理由。

2018年5月。
決済からひと月。買ったばかりの建物で、ようやく工事が始まります。
最初にやったのは、防水ではありません。解体です。
雨漏りしている建物を買ったのだから、まず屋上を直せばいい。
そう思われるかもしれませんが、順番は逆です。
雨漏りの工事で一番大事なのは、その正体と原因を突き止めることです。
どこから入って、どこを通って、どこに出ているのか。それは天井裏を開けないと分かりません。
先に防水を工事してしまえば、経路を確かめる機会そのものがなくなります。
そしてもう一つ、天井を落とすと「見えない雨漏り」が出てくることがあります。
室内には現れていないけれど、下地の中では確実に濡れている場所。
見つけないまま仕上げれば、数年後にもう一度やり直すことになる。
だから、解体が先。防水は、その後です。

2018年8月。
屋上のFRP防水は専門の防水屋、トップコートの塗装は塗装の社員。
外壁のサッシまわりは私と塗装社員、クラックの注入補修はまた専門の業者へ。
三年前、これがあるから借りられないと言ってあきらめた雨漏りです。
それを、自分たちの建物として直します。
あの日の私にはできなかったことが、三年後にはできるようになっている。
そのことが、単純に嬉しかったのを覚えています。
中古住宅の雨漏りをどう見極めるか|リノベの教科書・インスペクション編
ただ、工事そのものは思うように進みません。
本業である原状回復やリフォームの現場を回しながら、空いた時間で自分たちの建物に手を入れる。当然、後回しになります。
間仕切り壁、天井、水回りの解体は、設備の社員を中心に、手の空いた社員で進めます。
専門の業者なら三分の一の日数で終わったのではないかと思うほど、時間がかかりました。
階段の撤去やRCの斫り、コア開けは業者へ。金額もタイミングも、なかなか合いません。
大工工事も止まります。
社員の大工と専属の外注大工は別の現場に入っていて、なかなか来られません。
見かねて、紹介してもらった別の大工に入ってもらうと、そこから一気に進みます。
その方とは今も付き合いが続いていて、高崎市稲荷台町の新しい店舗の「庇(ひさし)」工事もお願いしています。
この現場で覚えたことが、もう一つあります。発注の仕方です。
当時の私は、工事を頼むたびに何社も見積もりを取っていました。
数を当たれば、そのうち適正な金額に行き着くと思っていたのです。
けれど、そうはなりません。
初めて取引する相手との見積もりは、どうしても高めになることがあります。
どんな現場になるかも、こちらがどんな会社かも分からないまま、赤字だけは避けたい。当然のことです。
大手の建築会社では、職種ごとの単価が先に決まっていると、あとから知ります。
見積もりを出してもらうのではなく、この単価でやれますかと聞く。
発注する側が基準を持っているから、話が早いわけです。
そこからは、こちらの希望単価を先に伝え、了解をいただいてから依頼する形へ変えていきます。
それでも、請求の金額が話と違うことは起こります。
思ったより手間がかかった。出戻りが出た。
うかがえば、こちらの段取りに落ち度がある場合も確かにあります。
ただ、当時の私には、どこまでが妥当な増額なのかを判断する物差しがありません。
何社から見積もりを取ったかは、関係がなかったのです。
基準を持っていない会社は、そこで必ず不利になります。
今は、長く付き合っている相手とも、工事の前に発注書を交わします。
疑うためではありません。
後から、お互いが困らないようにするためです。
この現場で、私は何度も同じことを考えます。
「外注とのタイミングや金額の調整にこれだけ苦労するなら、自社施工にするしかない。」
その一方で、社内の工事が遅いという声も出ている。
両方が同時に起きている。
そのことの意味を、当時の私はまだ考えていません。
この頃のティーズは、外から見ればうまくいっている会社だったと思います。
社員が増え、現場が増え、建物まで買った。
すごいですねと言われることも、この時期は多かったと思います。
けれど、内側は違います。
人が増えれば毎月出ていくものが増え、建物を持てば返していくものが増える。
資金のことを考えない月は、一度もありませんでした。
建物を買えば会社が強くなるわけではない。買った分だけ、毎月払うものが増えるだけです。
当たり前のことですが、そのときは目の前のことで手一杯です。
そして、資金のことを考えない月がないのは、経営を続けている今も同じです。
一階はオフィスと資材置き場に、二階はショールームにする計画でした。
つくろうとしていたのは、中古マンションのリノベーションを実際に見てもらえる場所です。
LDK、洗面脱衣室、トイレと浴室をひと続きにした水回り、寝室、書斎。
古材とアイアンを使った、当時の言葉でいうビンテージリノベーション。
テレビを掛ける面には杉板にエイジング塗装をして貼り、キッチンは古材とアイアンでオーダー。
見えるものは、できる限り黒でそろえる。
当時の群馬では、まだあまり使われていないものを選んでいたと思います。
ここで初めて試して、今もティーズの定番になっているものがいくつかあります。
買ってから一年が経っても、工事は終わりません。
そしてこの建物には、購入する前に確かめきれていなかった問題が一つ残っています。
私の確認不足です。
その結果、一階は当初考えていたオフィスにはなりません。
次回は、その話を書こうと思います。
VOL.007|家具屋を始めると、決めた場所。
本社にするはずだった一階が、家具屋になります。用途地域の制限をきっかけに家具屋を始めることになった、2018年から2019年の記録です。
ティーズオールワークスは、群馬県高崎市でリノベーション・リフォーム・注文住宅を手がけています。
インテリアショップ「ティーズガレージファニチャー」では、実際の家具や素材に触れながら、住まいのご相談をしていただけます。
まだ何も決まっていない段階でも構いません。