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三年前に、あきらめた場所。

2026年6月5日

三年前に、あきらめた場所。

雨漏りを理由に一度は断念した建物を、三年後に買うことになりました。

高崎市上小鳥町。2018年に購入した築45年のRC造建物。雨漏りにより天井にシミが広がった室内
買ったときの二階。天井のシミが、雨漏りの跡です。

2018年3月。

一件の物件情報を見て、思わず声が出ます。

「あっ、あの時の建物だ。」

三年前に一度あきらめた建物が、売りに出ています。

新聞を配る会社の建物でした

話は2015年頃に戻ります。

上小鳥町で借りていた十坪のテナントが手狭になり、移転先を探していた時期のことです。

高崎市上小鳥町。一階が三十坪、二階が二十坪。合わせて五十坪のRC造で、当時すでに築四十五年ほど。家賃は十五万円。

もとは新聞配達の会社が使っていた建物でした。一階は新聞やチラシを仕分ける作業場と事務所、二階は配達スタッフの休憩所。深夜に人が動いて、朝には誰もいなくなる。そういう使われ方をしてきた建物です。

当時の私たちには広すぎるくらいですが、興味が湧いて内見に行きます。

五十坪という広さも、その頃の私には魅力でした。作業場としても使える一階と、事務所にもショールームにもできそうな二階。頭の中では、もう使い方を考えています。

そして、中に入って驚きます。

猛烈な雨漏りがしていたのです。

天井には、雨の跡が広がっていました。一か所ではありません。

この雨漏りは大家さんが直してくれるのか。

そう尋ねると、借りる側で直してほしい、という答えが返ってきます。

借りている建物の屋上に、自分たちのお金で防水工事をやり直す。しかも、それで本当に止まるのかどうかも分からない。

さすがに手が出ません。

その建物はあきらめ、その後見つかった高崎市大八木町の倉庫を借りることになります。

三年後、今度は売りに出ます

それから三年。

大八木町の倉庫には人も道具も材料も増え、二部屋ではだんだん収まらなくなっていきます。

そして何より、あの倉庫は借りている場所です。

中古の建物を買ってリノベーションする会社になろうとしているのに、自分たちの本社は借り物のままでいいのか。

いつか建物を買って、自分たちの手で本社にしたい。そう考えていた頃でした。

売りに出たと知って、すぐ当時の不動産会社へ連絡し、その足で見に行き、そのまま金融機関へ。

一日のうちに、そこまで動きます。

中はすでに見ています。あの雨漏りも知っている。

それでも、迷いはありません。

借り入れができるなら、絶対に買いたい。

不動産会社には、正直にそう伝えます。

融資が通れば買いたい。通らなければ買えない。

すると、融資特約を付けて先に手付契約をしませんか、という提案をいただきます。

承認されればそのまま本契約へ。だめなら白紙解約で手付金も戻る。

一つだけ、想定外のことがありました。

三年前に見たとき、この建物は隣の駐車場の上までつながっていました。

あの部分も使えるのではないか。そう思って調べてもらうと、その増築部分は建築確認を受けていないと分かります。

売主側の負担で、決済までに解体してもらうことを条件に話を進めます。

三年前に見た建物と、私が買った建物は、少しだけ形が違っています。

少しだけ形が違っています
少しだけ形が違っています

社員には、言いませんでした

この購入を、私は社員に相談していません。

事後報告です。

相談すれば、そんな金があるなら自分たちに回してくれという話になる。

当時の会社には、そういう空気がありました。

待遇の話が出れば、専務である弟と二人でなだめる側に回る。

その弟より、当時の職人は全員が年上です。

それでも一番働いていたのは、弟でした。

悔しいけれど、今は頑張るしかない。

夜、弟とそんな話をしていたのを覚えています。

桜に、間に合わせたかった

その建物からは、農業用の貯水池が見えます。

池の周りを桜が囲み、屋上から見える。

四月の桜の時期に間に合えば、そこで花見ができる。

これから本気でリノベーションをやっていこうという集まりを、屋上でやりたいと思います。

現況有姿の引き渡しでよいという話になり、金融機関に説明して、なんとか決済が間に合いました。

2018年4月。

満開の桜を見ながら、屋上でバーベキュー。

七、八人だったと思います。近所の居酒屋に料理を頼み、わざわざガス焼き機まで買いました。焼くのは弟、写真を撮るのは私です。

この建物をフルリノベーションして大八木町から移転し、リノベーションの専門業者として会社を大きくしていく。

そういう話をします。

その場の反応は、「いいじゃないですか」、という感じです。

ただ、数日も経つと、それは陰口に変わっていきます。

当時はそれが悔しくて仕方ありませんでしたが、今は少し違うことを思います。

社員からすれば、事後報告で買われた建物の話を、屋上で聞かされたわけです。

買ったことが間違いだったとは、今も思いません。

ただ、順番を間違えたのは、やはり私のほうでした。

そして、五月から

工事が始まったのは、その翌月です。

買ってから一か月。ようやく、自分たちの建物に手を入れられます。

最初に手をつけたのは、屋上の防水ではありません。

解体でした。

雨漏りしている建物を買ったのだから、まず屋上を直せばいい。そう思われるかもしれません。

けれど、順番は逆です。

なぜ先に壊すのか。その話は、次回に書こうと思います。


VOL.006|先に、壊しました。

雨漏りを直すのに、屋上ではなく天井から手をつけた理由について書きます。

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