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家具のある風景。

2026年6月4日

家具のある風景。

築40年を超える一軒家。家具を借りて、完成した空間を写真に残しました。

群馬県高崎市。築40年を超える戸建てのフルリノベーション。家具を設置して撮影した室内
2017年8月。家具を借りて撮影した一枚です。

2017年8月に完成した現場の話です。

前回のジムから、四か月後のことでした。

高崎市にある、築四十年を超える二階建て。三十坪ほどの中古戸建てです。

不動産会社からのご依頼で、リノベーションして再販する物件になります。

◆誰のために、決めるのか

再販の物件には、住む人がまだいません。

どんな家族が暮らすのか、何を持ち込むのか、床に座る人なのか椅子に座る人なのか。

何も分からないまま、こちらで決めていくことになります。

注文住宅やお客様の家のリノベーションなら、迷ったときに聞ける相手がいます。

再販には、それがありません。

だから当時の私は、自分がいいと思うものを入れていきます。

それが正しかったのかどうかは、今もよく分かりません。

ただ、決めるのは自分だという緊張感は、あの頃のほうが強かったように思います。

残せるものは、残す

間取りは変えていません

間取りは変えていません。

キッチン、浴室、洗面、トイレは全て交換し、それ以外はほとんど既存のまま。

すべて和室だった部屋を、洋室へ変えていきます。

砂壁は、そのままではクロスを貼れません。

表面を固めて、パテを打ち、平らにしてから貼っていく。

手間の割に、完成すれば誰にも気づかれない工事です。

リノベーションには、こういう工程がいくつもあります。

見えなくなるところにどれだけ手をかけたかで、数年後の見え方が変わってくる。

和室の柱や枠には、木部塗装で色を入れています。

当時は、和室らしさを消すことが正解だと思っていました。

今なら、残す方法も一緒に考えると思います。

畳を上げて床を組み直し、フロアタイルで仕上げる。

部屋ごとにあった段差も、このときに揃えています。

外壁はコーキングを打ち直して塗装。

サッシは、そのままです。

断熱工事も、していません。

当時の私たちにとって、リノベーションとは見た目を変えること。それが正解でした。

この現場の写真は、今のホームページには載せていません。

今のティーズがつくるものとは、正直かなり違うからです。

それでも、この一軒がなければ後の話は続いていきません。

言い訳をするつもりはありませんが、当時は当時なりの理屈もありました。

再販の物件には、必ず販売価格の上限があります。

元請けの不動産会社は、その価格から逆算して工事の予算を決める。

サッシや断熱に手を入れれば、その分どこかを削らなければなりません。

見た目に効く工事と、住んでからじわじわ効いてくる工事。

限られた予算で先に選ばれるのは、たいてい前者です。

その順番に疑問を持つようになるのは、もう少し後のことになります。

なお、再販物件でしたが、買い手が決まるまでには一年近くかかっています。

きれいに仕上がっている。写真もよく撮れている。

それでも、決まらないときは決まりません。

あの頃はまだ、なぜ売れないのかを説明できるだけの言葉を持っていませんでした。

思うようにいかない現場

正直に書くと、この現場は苦しい記憶のほうが多く残っています。

ベランダの屋根をポリカーボネートに張り替えたときのことです。

バーコードのシールを貼ったまま施工されていて、しかも板が重なる位置に来ている。

うちの社員が一度外し、シールを剥がして、もう一度取り付け直しています。

天井の増し貼りも、畳を上げて床を組む工事も、なかなか進みません。

工期に間に合わせたいなら応援を呼ぶがどうする、と言われ、お願いすることにします。

来たのは、経験のない若い二人。

請求は、職人の人工として上がってきます。

引き渡しの後には、交換したばかりの建具にひびが入っていることに気づきます。

直してほしいと伝えると、「やはり駄目でしたか」、という返事です。

一つひとつは、大きな話ではありません。

直せば済むことばかりです。

それでも、その「直せば済む」を誰がやるのかで、現場の空気は変わります。

言えばやってくれる人と、言ってもやってくれない人がいる。

後者が一人でも入ると、工程はそこで止まる。

積み重なると、現場へ向かう足が重くなっていきます。

「自社施工なら、解決する」

当時の私は、こう考えていました。

こういう職人に当たってしまうから、うまくいかない。

頼んだ相手によって、仕上がりも工期も金額も変わってしまう。

自分たちの社員でつくれば、こんなことは起きない。

前回書いたジムの現場で感じていた手応えが、ここでさらに強くなります。

自社施工が、この問題を全部解決してくれる。

そう信じていました。

この現場から、続いている人たち

もっとも、この現場で出会ったのは、そういう人ばかりではありません。

サッシ屋さんと板金屋さんは、この一軒がきっかけで付き合いが始まります。

どちらも今でも一緒に仕事をしています。

腕がよく、こちらが言わなくても先を読んで動いてくれる職人です。

電気工事は、前回のジムと同じ電気屋さんです。

金額も仕事も申し分なかったのですが、年齢のこともあり、これ以上は難しいと言われます。

この現場が、その方との最後の仕事になりました。

撮影の日

工事が終わり、写真を撮ることになります。

この頃はすでに、プロのカメラマンに撮影を頼むようになっていました。

建築の写真には、水平と垂直をきちんと出すという約束事があります。

柱が傾いて写れば、それだけで空間は歪んで見える。

当時の私は、それを言葉にして伝えることができていませんでした。

言わなくても伝わるはずだと思っていたことが、実際には伝わらない。

この頃はまだ、そういうことの連続です。

そしてもう一つ、この日のために用意したものがあります。

「家具」です。

前年に自宅をリノベーションしたとき、前橋の家具屋で家具を選んで置いています。

その店に、こう相談します。

「ティーズでリノベした家に、撮影の日だけ家具をレンタルしてもらえませんか。」

返事は、二つ返事。

その代わり、設置と引き上げを手伝ってほしい、と。

当日は社員を集めて、みんなで運び込みます。

ソファ、ダイニングセット、テレビボード、照明、それに雑貨。

置く位置は、その場で決めていきます。

少し寄せてみる。

角度を変えてみる。

窓から入る光の向きを見て、ソファの背をどちらに向けるか話し合う。

照明のコードの落ち方まで気になり始める。

掃除をして引き渡すだけの日になるはずが、いつのまにか全員で部屋をつくっています。

世界が、変わった

世界が、変わった
世界が、変わった

置き終えて、部屋を見たときのことは今でも覚えています。

世界が変わった、と思いました。

同じ部屋です。

家具を置いただけ。

それなのに、見えるものがまるで違う。

ソファがあり、テーブルがあり、その上に何かが載っている。

それだけで、そこに人がいる風景が立ち上がってきます。

自分たちが直した床の色も、貼り替えた壁の質感も、家具が入って初めて意味を持ちはじめる。

床は床として見るものではなく、椅子の脚が乗るものになる。

壁は壁として見るものではなく、ソファの背景になる。

素材の良し悪しは、そこで使われる家具が決まって、ようやく分かるのだと思います。

逆に言えば、私たちは家具が入る前の状態を見て、良し悪しを判断していたことになります。

仕上げたばかりの、誰も暮らしていない部屋。

あれは建築が完成した姿ではなく、その手前の状態です。

苦しい現場です。

それでも、この一枚が撮れたことで、全部が報われたような気がしたのを覚えています。

その日、決めたことがあります。

これからは、撮影はできる限り家具を置いてからにしよう。

そして、この家具屋さんとは今後も一緒にやっていこう。

そして、次の話

この経験があったから家具屋を始めた。

そう、きれいにつなげるつもりはありません。

当時の私は、自分たちが家具を売ることになるとは考えてもいませんでした。

ただ、家具が入った瞬間に見えたものは、その後もずっと頭に残ります。

完成した家を引き渡すというのは、どこまでのことを指すのか。

床と壁と設備が整っていれば、それでいいのか。

答えは出ませんでしたが、問いのほうは消えません。

そして会社のほうは、職人が増え、道具が増え、材料が増えていきます。

大八木町の倉庫では、だんだん収まらなくなっていく。

翌年。

三年前に、一度あきらめた建物が売りに出ます。

次回は、その話を書こうと思います。


VOL.005|一度あきらめた場所へ、戻る。

雨漏りで断念した建物。三年後、今度は自分たちの場所として向き合いました。2015年に見に行き、猛烈な雨漏りを理由にあきらめた建物がありました。2018年、その建物が売りに出ます。

ティーズオールワークスは、群馬県高崎市でリノベーション・リフォーム・注文住宅を手がけています。

インテリアショップ「ティーズガレージファニチャー」では、実際の家具や素材に触れながら、住まいのご相談をしていただけます。

まだ何も決まっていない段階でも構いません。

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